【ヒラスズキが最長再捕期間記録を更新!(8年11ヶ月)】

JGFAでは、1985年からタグ&リリースが行われるようになりましたが、つい最近、再捕されたヒラスズキが従来の最長再捕期間を更新しました。従来の最長再捕期間は同じくヒラスズキの2,564日(7年と9日)でしたがこのほど再捕されたヒラスズキは3,258日(8年11ヶ月)経過していました。
 
この魚をタグ&リリースしたのは江川典男さん(WILD OCEAN 所属)。再捕したのは、館山市にお住まいの石井将人さん。
今回再捕されたのヒラスズキのデータを含め、最穂期間が700日を越える魚のタグ&リリースデータを表にまとめてみました。
一番下からダウンロードできますのでぜひご覧ください。

 「成長と年齢」
今回のヒラスズキ、初回放流は2008年2月16日、叉長74cmでした。このときのサイズもたいへん立派です。放流場所は千葉県白浜。それから8年11ヶ月もの長い間、このヒラスズキは成長を続けていました。しかし、すでに70cmを超えていたヒラスズキの成長は1年にせいぜい1~1.5cm。約9年かけて全長85.5cmになったということのようです。全長85.5cmを叉長に換算しますとおよそ83.5cmほど。つまり、この間に9.5cmほど成長したことになります。
今までのデータからしますと叉長74cmの時点でこのヒラスズキはすでに満7~8才になっていたと思われますので、それに8年11ヶ月が加わり、再捕獲されたときは少なくとも16~17才になっていたのではないでしょうか。

85cmオーバーのヒラスズキはアングラーの憧れのサイズです。しかし、このサイズになるまでに15年以上かかるとしたらそう簡単に釣れるものでないことはお分かりになるはず。大きいのが釣りたいなら、リリースを心がけないと大物は残ってくれない。そのことがはっきりとわかる1尾となりました。

【移動】
一方、再捕場所は、放流地点に近い館山市の地磯。しかし、今までのデータから外房のヒラスズキは、スズキよりも移動範囲が広く、外房や相模湾、駿河湾のヒラスズキは三重県尾鷲付近まで移動したのが5例ありました。
また、2~3月に神奈川県真鶴の定置網にヒラスズキがまとまってこの時期に入ることがあり、外房のヒラスズキもこの時期にここの定置網で再捕されています。(産卵移動だといわれています。)伊豆半島の妻良や駿河湾にも外房から移動した例があります。
そうして、また外房に戻ってくることを繰り返しているようなのです。再捕場所が近いからといってその付近にとどまってというより、季節をまたいで広範囲に行ったり来たりしているのが外房のヒラスズキの実態だと考えられます。

スズキもヒラスズキも一度回遊したところに年を越えて戻ってくる性質があるようです。茨城県常総市や守谷市の鬼怒川に遡上したスズキ(利根川河口から数十キロ上流です。)が冬には水温低下とともに産卵行動で海に降り、また水温が上がると遡上し、同じ場所で再捕されたという例が4個体もあります。

外房は太平洋側でのヒラスズキの北限です。いつまでも大きなヒラスズキが釣れるといいですね。

JGFAタグ&リリースプログラムで最長再捕期間を更新したヒラスズキの放流時点の魚体。放流時点で叉長74cm、その後8年11ヶ月後に全長85.5cm に成長。(写真提供:江川典男さん)

再捕報告書