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東京都三宅島をはじめとした伊豆諸島、および小笠原諸島の磯魚資源管理に関する要望書


東京都知事  石原慎太郎 殿


        2005年1月14日

        ジャパンゲームフィッシュ協会
        会 長    岡 田 順 三
  

東京都三宅島をはじめとした伊豆諸島、および小笠原諸島の磯魚資源管理に関する
要望書提出について

謹啓 

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたびの要望書は、数年にわたる噴火災害から復興し2005年2月から島民の皆様の帰島が開始される三宅島ならびに伊豆諸島、小笠原諸島の磯釣りに関して当協会の総意としてご提案したいことをまとめたものでございます。貴知事および水産課あての2通をご用意いたしましたので何とぞよろしくご検討のほど、お願い申し上げます。

敬具

【 追記 】
本件要望書に関するお問い合わせならびにご回答につきましては下記までお願い申し上げます。

ジャパンゲームフィッシュ協会 事務局
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1−11−2 アサヒビル2F
TEL 03-5423-6022  FAX 03-5423-6023
E-メール japan@jgfa.or.jp 


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         要   望   書        


東京都知事    石原慎太郎  殿
東京都農林水産部   水産課  御中                     
          2005年1月14日

          ジャパンゲームフィッシュ協会
          会 長    岡 田 順 三



東京都三宅島をはじめとした伊豆諸島、および小笠原諸島の磯魚資源管理に関するお願い


私どもジャパンゲームフィッシュ協会は組織を通じて釣りのルールの啓蒙、マナー向上、水産資源の維持、専業漁業者との共存などを旨とし、安全で楽しい釣りを将来にわたって続けていけることができるよう活動している釣り人の団体です。
(注1・別添資料をご覧下さい。以下同)

さて、三宅島に関しましては2005年2月より島民の皆様にとって念願であった帰島が開始されるというニュースを聞きました。そこで、この機会が別添の理由(注2)で三宅島はじめ、伊豆諸島、ならびに小笠原諸島の磯魚の資源管理を新たな視点でとらえ、これらの大切な資源をどのように将来に活かすかを検討するまたとない好機であると思い、以下に述べる事項について提案、要望させていただく次第です。(別紙 要望・その1〜3)

当協会の提案、要望を受け止めていただきご検討下さいますようお願い申し上げます。


【要望・その1】三宅島における「釣魚採捕制限規則」(バッグリミット)の採用・実施
[要望の内容と説明]
昭和37年(1962年)、都会の釣り人達が本格的に三宅島を訪れ始めました。それは当時の花形であった磯釣り(特にイシダイ類を狙う)の新たな釣り場の開拓地としての訪島でした。しかし、別添の理由(注3)および、何の規制もない中で釣り人たちが無制限に獲り続けたことが原因でイシダイ、イシガキダイをはじめとした磯魚の多くは見る影もなく減少してしまいました。そのような状況の三宅島でしたが、皮肉なことに自然災害による約3年間にわたる自然保護の結果(更に続くかもしれませんが・・)、ほぼ100%に近い禁漁の状態となりました。多くの魚達のそれを取り巻く環境は、かつての最大の天敵?であるあらゆる釣りの形態の人々から守られた形となりました。その結果、魚達の豊かであった以前の三宅島に戻りつつあります。
また、小笠原母島漁業協同組合の取り組みの実例(注4)もあることから、これは広い意味で私達にとっても千載一遇のチャンス(注5)と考えております。我々釣り人としても過去の釣り場荒廃をもたらした張本人として心から反省するとともに再び同じ過ちを繰り返さないためにも三宅島の地域振興と経済効果(注6)に大きな利点のあるこれらイシダイ・イシガキダイについての「釣魚採捕制限規則(バッグミリット)の採用・実施」を提案、要望いたします。
その具体的内容は、下記の通りです。

* イシダイ・イシガキダイの永続的持ち帰り禁止(100%キャッチ&リリース)
(三宅島海域における漁業を含むイシダイ・イシガキダイの売買の禁止を含む) 


【要望・その2】伊豆諸島、小笠原諸島における「釣魚採捕制限規則」の採用・実施
[要望の内容と説明]
イシダイ、イシガキダイが釣り人にとって最重要魚種の一つであり、三宅島を始め磯釣りの絶好地である伊豆諸島、小笠原諸島においてトップに位置する経済効果をもたらす魚達であることは間違いのない事実です。また、もう一つの集客力とその経済効果絶大の最重要魚種はメジナ類(メジナ、クロメジナ、オキナメジナ)です(小笠原諸島を省く)。
これらの魚種について伊豆諸島、小笠原諸島においても三宅島同様、資源の永続的利用を図るには、釣り人の釣り放題に任せていてはまったく未来はないばかりか、地域振興にとって大いにマイナスであると考えます。
したがって、これらについても採捕に当たって、下記のような「釣魚採捕制限規則」を採用・実施されることを要望いたします。

* イシガキダイの持ち帰り規制 
【1日一人全長75cm以上1尾のみ持ち帰り可。ただし、三宅島及び小笠原諸島はオールリリースとする】

* イシダイの持ち帰り規制 
【1日一人全長70cm以上1尾のみ持ち帰り可・ただし、三宅島及び小笠原諸島はオールリリースとする】

* メジナ類(メジナ、クロメジナ、オキナメジナ)の持ち帰り規制
【1日一人全長35cm以上総てのメジナ類を含め2尾のみ持ち帰り可・三宅島のみ45cm以上1日一人1尾のみ可】(上記の魚種の漁業禁止〔売買禁止〕)


【要望・その3】伊豆諸島、小笠原諸島における「撒き餌規則」の採用、実施
[要望の内容と説明]
2004年4月1日から新しい漁業法の施行と共に東京都漁業調整規則にある「撒き餌釣りの禁止」が、実際の現場でどのように取り扱われるのかは私共を含め多くの釣り人はよく知らないのではないでしょうか。しかし、今までの様な安易な撒き餌使用は認めるべきでないと考えております。
今からでも、東京都の海を利用する私共の要望が、都の水産行政に組み入れられることを願っています。
さて、現在の私どもの把握している東京都近海の磯におけるイシダイ、イシガキダイ、メジナ類に関する撒き餌の使用実態とその経済性は別添資料(注7)のとおりですが、その使用にあたっては魚類の乱獲、磯環境への十分な配慮が必要です、一方、その使用はこれら磯釣りにあたっては、既になくてはならない釣り文化の一つの要素となっています(メジナ類を筆頭に)。これは日本に限ったことではなく全世界共通であり、遊漁を経済効果のトップの一つに上げる米国フロリダ州の漁業法(注8)においても、認められています。
つまり、撒き餌その物が悪いのではなく、問題はその質と量であり、その使用を前提条件として下記にその内容を提案、要望いたします。

* すべての天然撒き餌、又は食品衛生法に基づく成分表示のある撒き餌のみの許可。

* 前記したことを実施する前提での伊豆七島・小笠原諸島における岸からの全面的撒き餌の許可


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【別  添  資  料】

(注1)私共が参加しております協会は平成16年(2004年)現在会員数約5000人を保有する東京に本部を置く釣り人の団体です。名称はジャパンゲームフィシュ協会(略称「JGFA」)と申します。
(更に詳しくは同封の機関紙をご覧いただければ幸いです。)

本協会は、釣魚の生態の把握、魚族資源の維持・保護、環境の保全に貢献し、ならびに健全なるスポーツフィッシング及びそのルールを確立し、普及・発展せしめる為に必要な事業を遂行し、もって国民生活の資質向上、真に豊かな社会の実現に寄与することを目的としています。

このため会員は、一種の魚釣りに関わる人々のみではなく(例えばコイのみを釣るとか、磯でのみ釣るとか)日本国内におけるほぼすべてのジャンルにまたがるスポーツフィッシングを志す釣り人が参加しております。


(注2)当協会の重要な事業として、国立水産研究所(現独立行政法人、)また、多くの都道府県水産試験場、水産課などのご理解とご指導、ご協力を得て、タグ&リリース(釣魚標識放流)を1985年より21年間、総尾数111、178尾(2003年末集計)を実行してまいりました。
その結果、我々スポーツフィッシングを志す釣り人はもちろん、食べること、単に持ち帰ることなどを主な目的とする漁獲の手段としての釣りをする人々にとっても、過去に知り得なかった多くの貴重な資料情報を手にするに至りました。
その最も大きな収穫は、ごく普通に釣り上げた魚を特殊な処理をせずにその場の水に帰した場合も、そのほとんどが生き延び、次世代生産のための産卵にまで加わることが分かったことです。我々の提言する「スポーツフィッシング」「ゲームフィッシング」を実行するためにも、都民全体(国民)の大切な資源としての魚達を次世代に伝えてゆくためにも、これはたいへん重要な調査結果だと思います。


(注3)昭和37年(1962年)当時の磯釣りは、一つ地域の磯魚を釣り切ると、次の釣り場を求めて歩くといういわば貴金属の鉱脈を堀り尽くすのと同様な過程を経ていました。伊豆七島はその典型であり昭和30年前後からの大島、ついで利島、式根島、新島、神津島そして三宅島と移動が続いたわけです。
しかもほとんどの磯釣り場は(特にイシダイ類を狙う)、たった数年で釣り尽くし、その結果、現在に至る永きにわたって伊豆七島のみならず、東京都の釣りのすべてに関わる経済活動をも少なからず後退させました。


(注4)こうして既に新たな鉱脈?はほとんど底をつき、新たな釣り場は現れないであろうと考えられていた
1990年代後半に、それまでイシダイ類はいないとされていた小笠原の磯に多くの大型イシガキダイが発見され、センセーショナルな話題となりました。
幸いなことに、特殊な事情を持ち合わせたがために、この重大な事実に気付いた小笠原母島漁業協同組合は組合内部での決め事として取り組みました。日本独自の伝統ある文化の一つ磯釣り(イシダイ釣り)を守るためにも、かつての反省を含めて我々JGFA会員を中心に心ある釣り人達がバックアップし、またそれ以上に最後に残された島の貴重な観光資源となる遊漁のもっとも大切な資源の一つとしてイシダイ、イシガキダイについて次の行動がなされています。すなわち、【一航海につき一人5キログラム以上のイシダイ(イシガキダイ)一尾のみの持ち帰りを認める】という不十分ながらも日本の遊漁史上、始まって以来の快挙というべき決まりを設け、絶大なる支持を受け実行されております。このことは自然保護利用と経済活動のひとつの好例になりえると思われます。(ちなみに小笠原でイシダイ、イシガキダイを狙う釣り人は一般観光客の3倍以上1日1人平均¥45、000以上の経済効果をもたらす。小笠原海運汽船料金は別。)
  

(注5)当協会でのアンケート結果ではイシダイ・イシガキダイを狙う釣り師(石鯛師または磯釣り師)は、
釣り人の中でもフライフィッシング同様、非常に意識が高く(特に東京都を主にした首都圏)、リリース
    に関してほとんど問題が起きないと思われます。彼らはこの釣りが基本的にお金がかかる魚釣りのため
計算高く釣りを考えておりません。言い換えると釣りを「ロマン」と考える方が非常に多く、経済効果
においても最重要な人々です。ちなみに噴火以前の魚影の薄くなってしまった時代の三宅島でさえ一人
一日最低¥25,000程度(一般観光客の3倍程度)の経済効果がありました。これは土日だけを考えても年
間で最低500人×,000×52週=6億5000万円程度と推定されます。
今後、遊漁、漁業の双方とも特定魚種の100%キャッチ&リリースが実行された場合その集客効果は素晴らしく絶大です。理由は簡単で他に行くより魚に出会える確率が高いからです。
つまり今までの自由な持ち帰りの釣り場ですと「昨日、三宅島で100尾のイシダイ釣れた!!」と聞けば『ああ今日は100尾も釣られていなくなった?…今更行っても遅いよな』となる訳ですが100%リリースの釣場では評価は全くの逆で「昨日、三宅島で100尾のイシダイ釣れた!キャッチ&リリース!!」となれば『えっ!100尾もリリースされているの!!…そんなに魚がいるのが確実なら、是非行かなくては!!』となると思われます (イシダイ類はリリースされた翌日にもまた釣れます)。これは淡水における各地の100%キャッチ&リリース区域において実証済みであり、これが正に現代型釣り師の人情なのです。

しかも集客は東京都だけに限らず日本中はおろか広く世界に及びます。(現在すでに八丈島には大して釣れないにもかかわらず台湾、香港からの釣り客が年間延べ500人程度ある。)
更に100%キャッチ&リリースが実施されればマスコミが注目し、こうした宣伝効果は非常に高く多額の金額が非常に永きにわたって三宅島に落とされる結果となりましょう。
しかし、もし今まで通りの勝手な持ち帰りを認めれば、わずか2〜3年でまた以前の三宅島に逆戻りが予想され、これは誰にとっても全くのマイナスです。
またこうした100%キャッチ&リリースの措置を良しとする釣り人は適切な自然管理費用負担も当然のこととして受け入れる要素を充分持ち合わせているといえましょう。
強制力(逮捕権等)のあるレンジャー(管理監視官)の採用は三宅島に新たな雇用も生みだします。しかもイシダイ類は三宅島において漁業価値は思ったより低く漁業においてこの措置をとっても、ほとんど問題がなく(最悪でも3年程度の漁業補償費用は金額が非常に低いため、前記した自然管理費用からの遊漁者による負担で可能と思われます。)漁業、遊漁ともども利害がからみません。「釣って逃がす」ことによる経済効果が「食するための漁」の経済効果をこれほど顕著に上回るという最好例のひとつとなりましょう。


(注6)100%キャッチ&リリースによるイシダイ・イシガキダイの定着効果も素晴らしく、釣魚標識放流
    調査でも、一例を省いたすべてが見かけ上500m以上の移動をしておりません。つまりほとんどが同じ
場所で釣れ続けるわけです。非常にタフであり同一魚が短期間に何度も釣られ、最終的には10〜20
年以上の永きにわたって生き続け、本来のゲームフィッシュとして経済基盤を支えるに充分な役割を果
たし自然保護利用と経済活動との融合を見事に成し遂げる主役の一つとなりえるのです。(逆に他からは
ほとんど資源の加入は見込めず、なおかつ成長が遅いため、釣ったものをすべて持ち帰れば確実に減っ
てしまいます。)
またこれは、同じく海面を利用し経済効果のあるダイビング愛好家との軋轢も最小限にとどめること
ができます。こうした理由から【イシダイ・イシガキダイの持ち帰り禁止(100%キャッチ&リリース)】の罰則を含めた法的拘束力のある実施をお願いする次第です。



(注7)《要望・その1》でお伝えしたとおり、イシダイ、イシガキダイが釣り人にとって最重要魚種の一つで
あり、三宅島を始め磯釣りの絶好地である伊豆諸島、小笠原諸島においてトップに位置する経済効果を
もたらす魚達であることは間違いありません。現在これの撒き餌としては、主に冷凍の天然ウニガ
ラが使われており1日平均一人3kgというところです。
もう一つの集客力、経済効果絶大の最重要魚種はメジナ類です。(メジナ、クロメジナ、オキナメジナ・小笠原諸島を除く)。これを釣るにあたって撒き餌は昔から必需品とされており、かつては海苔類が使われ、40年程前にはイワシのすり身が使われ、20年ほど前からはオキアミが使われ、10年ほど前からはこれに素材不明の加工(人工)品が加わるようになりました。使用量はこの不況下でさえ1日一人平均6kg程度あるでしょう。
これが現在の東京都近海の磯における実情です。


(注8)米国フロリダ州では釣り人に大変大きな経済効果・目的税収を期待し、またその通りになっております。それというのも釣り人はもちろん、ダイビング等のアメリカ型遊漁者?に必要な魚種が充分にその水域あるように釣魚採捕制限規則(バッグリミット)がしっかりと働いているため、必然として少量の撒き餌でも、高い集魚効果が認められるからであり、それゆえ多くは撒き餌そのものを必要としません。
しかし日本では、まったくの逆で無計画な、採り放題やり放題による魚の減少が「採れなくなったからもっと撒き餌!釣れなくなったから更に撒き餌!?」となり、それがまた魚を減らすという典型的悪循環となって現在に至ってしまったのも事実です。
ちなみに1970年代と比べ撒き餌の量は当然減ることはなく、それどころか現在ではすべての時期、すべての釣場でいかに撒き餌をしようとも1980年代の魚の数すら集めることはできません。